微生物の働きによって染まり、空気中の酸素に触れて発色する。
LITMUSが行う藍染は、染色というよりも自然との対話といった方が正しいかもしれません。
天然灰汁発酵藍建てという古くから伝わる技法を用い藍染を行うLITMUS。
素材や柄の独自性にこだわりプロダクトを生み出すSEVEN BY SEVEN。
両者の邂逅により、かつてない特別な作品が完成しました。
『藍は生きている』
今回お話を伺ったLITMUSの松井裕二さんが藍染めに出会ったのは約30年前。古着を掘っている中で出会った、藍染が施された日本の古い衣服を見た時でした。
「目を奪われました。日本にもこんなに美しくて深みのあるものがあるんだと強く感動したのを覚えています」
その素晴らしさに感動した松井さんは、本格的に藍染めの道へ。その奥深い世界にさらに魅せられていきます。
「化学染料が生まれる前、そもそも青は作り出すのが難しい色でした。青い鉱物を削ることで作り出すこともできましたが、多くは特定の植物から長い時間をかけて抽出するしかない。とても手間のかかる色なんです」
その手間暇とは?
「日本には藍師という職業の方がいて、床が土の蔵で葉を山積みにして1週間に1度水をかけ、腐葉土を作るような方法で発酵をさせていきます。次第に分解が始まり、青だけが凝縮して残っていく。それを約4ヶ月続けると、すくもと呼ばれる藍液の原料ができます」
「ただし、すくもに含まれる藍の色はアルカリ性の水にしか溶けないという特性があります。水に薬品を加えればアルカリ性の水は簡単に作れますが、僕らはそういった方法を取らず、昔ながらの方法で作る天然のアルカリ水を用いています」
「木の灰をお湯に入れ撹拌して沈殿を待つんです。そうすると残った透明な水は天然のアルカリ性になる。1番目に抽出した灰汁は舐めるとピリッとするくらいphが高い。それは使わずに、また新しい熱湯を入れて、2番、3番と灰汁を取っていく。大体8番くらいまで取った後、2番から5番ぐらいまでを混ぜ合わせて最適な天然灰汁を作り出すんです」
すくもと灰汁を混ぜ合わせた後、さらに糖分の元となる小麦の殻と酒を入れ発酵を促す。それが天然灰汁発酵藍建てという名前の所以です。
「発酵が進むとぶくぶくと泡が出始めて藍液が熟成していきます。その間は温度や湿度なども管理しながら進めます。菌のバランスが崩れてしまうと思い通りの藍液は完成しません。そういう意味では藍はまさに生きているものなんです」
その工程は実に複雑で繊細。藍液は幾重にも手間と暇を重ねることで生まれる染料といえます。
「そうして出来上がった藍液は表面は青いのですが液体自体は茶褐色。染めた直後の衣服は茶色みを帯びていますが、空気に触れさせて酸化させるとどんどん青くなっていく。それを熱湯で洗うとさらにクリアな青になり、それを繰り返すことで深く味わい深い藍染めになっていくんです。狙いたい青の濃さによっては、数十回染め重ねることもあります。もう30年来この作業を続けていますがその変化は毎回違う。1つとして同じものを作ることはできないんです」
松井さんは「藍染めをしているというより、“藍が生まれる”手伝いをしている」といいます。そうして生まれた藍染の服は、長い時間を経て豊かに育っていくのです。
「SEVEN BY SEVENの服は毎回見させてもらっていますが、『これを藍染にしたら面白いだろうな』というアイテムが毎回ある。今回もとても面白いものができたと思っています」
色彩の豊かさを表現する時、多くの場合はそれを“深み”と表現します。けれどLITMUSが作り出す藍染は違う。深みというよりも、“凄み”といった方がしっくりくるかもしれません。
1日に数着しか作れない、一期一会の希少なコラボレーション作品。この機会をお見逃しなく。