19歳で渡米し、多感な時期をサンフランシスコで過ごした川上淳也が培ったのは、"自由であること"と"自分のスタイルを貫くことの面白さ"です。
「言うまでもなくサンフランシスコはジーンズ、アメカジ、古着の聖地。その文化にも少なからず影響を受けましたが、重要なのはそういった表面的なことではなくその奥にあるものを理解することだと思っています」
「それはユーモアだったり、ある種の反骨精神だったり、単なるおふざけだったり、言葉では言い表しにくい複雑なものなのですが・・・SEVEN BY SEVENで表現しているのは要するにそういうこと。既存のカルチャーやカテゴリーをトレースして再編集するのではなく、その深部にある重要なことがいかに表現できるかが、ブランドを形作る鍵だと思っています」。
2024年で丸10年を迎えるSEVEN BY SEVEN。奇しくもそのタイミングでランウェイでのコレクション発表の機会を得ることに。
「偶然が重なったと言うのが本当のところです。だからランウェイでの発表には特に気負いはありませんでした。いつも通りの作業でコレクションの製作を進めていた結果、いつも以上に手応えを感じることができるものが完成した。最初から今までずっと変わらずやってきたことが、ひとつ上のクオリティに辿り着いた気がしたんです」。
インドへの旅
今回のコレクションを構成する要素として欠かせないのが、インドへの旅。
「インドにある工場とは兼ねてから付き合いがあったのですが、現地に行ったことは一度もなかった。クオリティも高いものがあるし、一度現地を見ておこうと思ったのがきっかけです。どちらかというと現場でひらめくタイプなので、何かいい出会いがあるかもという淡い期待も持ちながら」
「伝統的な技術、見慣れないけどすごい素材、独特な技法。どれも刺激的なものばかりでした。マクラメ編みのレザー、マドラスチェックの生地、パッチワークなど、それらから着想を得た作品が今回のコレクションの中核をなしています」。
思いがけない出会い。それを形にする柔軟な発想。そんなある種のイレギュラーが、SEVEN BY SEVENの服に独特な価値をもたらしているのかもしれません。
始まりはブーツのカットオフ
「様々な情報を取り入れて、咀嚼して反芻して自分のものになるのを待つ。仕入れた情報が受け売りじゃ無くなるのを待つのですが、僕はその時間が長い(笑)。その代わり、1つ目のピースが出来上がったら早いんです」。
今回、最初に形になったのが、ロングブーツを裁断してレザーの編み込みを加えたリメイクピース。
「実はブランド初期の頃からこの手のリメイクはやっていたのですが、きちんと作品として打ち出したのは今回が初めて。ユーズドのブーツを集めて、RoosterKing&Co.の松崎さんに依頼して手編みで装飾を加えてもらいました。すごく特別なピースになったと思います」
その"特別なピース"が完成したことで、コレクション全体に1本の筋を通すことができるように。
「ランウェイでコレクションを発表するにあたり、足元はものすごく重要な要素だと思っていたんです。すべてのルックを支えるものだと感じていました。それが見えたことで、分散していた点が一気にまとまって、ようやくコレクションとしてまとめることができた。ぼんやり見えていた景色が明確になった瞬間でした」
服としてのクオリティ
「ブランドスタートから10年間もの間 "面白そうだから" というわがままな理由で(笑)、実験的な試みを続けてきましたが、今回のコレクションではそこに確かなクオリティが加わった実感があります。デザインやアイデアの面白さだけでなく、服としての品質が確かに上がりました。その点にもぜひ注目してもらいたいと思っています」
「アメカジでも、ヴィンテージでもなく、リベラルであること。既存のやり方を疑って、新しさを求めること。まだ誰も気づいていない価値を拾い上げること。僕らは最初から今まで、結句何も変わっていなかった。新しいシーズンに、ぜひご期待ください」